2.耳元で呼ぶ声
だいたい10年前、まだ高校生の時です。

大阪の難波(ナンバ)に某商業ビルがあるのですが、友人が「あそこは昼間でも出るらしい」から見に行こう、と言い出したのがきっかけだったと思います。
当時、まだ自分に霊感らしきものがあるとは全然気がついていなかった私は「おもろいやんけ」と、その友人を含めた3人で早速、行ってみる事にしました。

とりあえず上から下まで回ってみたのですが、別段何を見る訳でも無く、何かを感じるでもありませんでした。
「なんやツマラン、帰ろ」という事になったのですが、「折角来たんやから」と、レコードコーナーでCDを見て行く事にしました。
で、私がそのレコードコーナーで買いたいCDは無いかな、と探していると・・・


「おい、こっち」と、右の耳元で声が聞こえました。


「え?」と顔を上げても、隣には誰もいません。
と、こんどは正面から「こっちやんけ」という声。
そっちを向くと、友人がいました。が、彼もCDを探している様子で下を向いていますし、聞こえた声は明らかに友人ではなく、もっと年上の声です。
一応「呼んだか?」と声をかけようとした時、今度は背後から「こっちだよ」という声。
振り向くと右から「こっちだ」と呼ばれ、そちらを向くと斜め前方から「こっちやって」と声が…。
遂には、全ての方向から折り重なるような声が「こっちや」「こっち」と響き始めたんです。

そこに友人が来て「何キョロキョロしとんねん?」と、平然とした顔で言うので、「聞こえへんのか?」と尋ねると、「何がやねんな?」と言うのです。
「いや、俺の周りで、誰かがこっちこっちって呼んでるねん。
物凄い人数やと思う…」と私が言うと、その友人はそれこそ顔色を変えて、私の腕を掴むと、もう1人の友人を見捨ててエスカレーターに向かって走り出しました。

声は、レコードコーナーを離れるとピタリと止みました。
が、その事を言っても、友人は手を離そうとはしませんでした。

すぐに気が付いて追いかけてきた、見捨てられた友人と3人で、逃げるようにそのビルを後にし、帰りの地下鉄の中で言い出しっぺの友人に、ずっと前に千日前火災と呼ばれるデパートか何かの大火災があり、多数の焼死者が出た、という話を聞かされました。 
…先に言え〜っ!。
なんとなく怖いので、今でもその火災の委細について私は調べていません。

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