8.北海道某湖「追ってくる女」
これは、私の友達から聞いた、ほんとにあった話らしいです。

北海道の某湖。
実は、そこは俗に言う「心霊スポット」として、(変な言い方ですが)一流と言って差し支えのない場所で、「深夜、湖の湖面に髪の長い女性が立っていた」や、「青い光が追ってきた」と言う話が絶えない場所でした。

私の出身地旭川からそこまで、90kmにも及ぶ「ウォークラリー」という、延々と歩く、というイベントが毎年開催されています。
それは、一泊二日程度の物で、体力に自信のあった友人、(仮にK君)は、友達7人を誘い、担任と知り合いの兄を引率につけ10人で参加しました。

そして、当日。気持ち悪いくらいの快晴で、まったく何も起こりそうもありません。私の友人は、「別に何も起こりそうにないや」。10人全員で歩き始めました。
多少暑かったのですが、みんなそれなりに楽しみ、行程の7割あたりでテントを張って、一夜を会談話で明かしました。

ですが、二日目。
順位は中間あたり…だったのでしょうか。
まあ、とりあえずゴール地点の「ログハウス」にたどり着き、それなりの達成感を得つつ、三々五々に集まり北海道の星空を楽しんでいました。と、その時です。
「あれ…?」担任の先生が首を傾げました。
「どうしたんですか?」
K君が聞くには、「メンバーが2人足りない」とのことでした。
K君の親友、U君と、その友達のEさんの姿が見えません。
「駆け落ちでもしたんじゃないの?」誰かが言いました。

しかし、みんなそんな冗談で笑えません。なぜなら、その湖の周りは深い森に囲まれ、一度見失うと地元の人でも帰ってこれるかどうか、というところだったからです。
すぐに、二人ずつの捜索隊が結成されました。
「おーい、U!どこいったんだぁ!」
迷わないように持ったトランシーバーから、他の友達の声が聞こえてきました。
K君も必死に叫びました。
「U!さっさと帰ってこないとひどいぞ!」
何がひどいのか、自分でもわからないほどK君は動転していました。

しかし…
「だめだ」必死の捜索にも関わらず、U君は一向に見つかりません。
「いったんログハウスに戻って、捜索隊を結成してもらおう」
先生の提案で、街灯一つない森の一本道を8人は歩き出しました。手に持った懐中電灯の光だけが、彼らを照らす道しるべです。
と…、
「おーい…」後ろの方からかけてくる人影が見えました。
「U!?」
K君は、あわててそちらに向かって走り出しました。先生方もほっとした顔を見せていました。
「どこ行ってたんだよ、U!」
一番ほっとしたのはK君だったでしょう。しかし、その人影はU君一人だけです。
Eさんは?いぶかしむ彼でしたが、素直にU君の帰還を喜んでいました。

しかし。
「にげろ!!」U君の顔は真っ青です。
事情もわからないまま、K君は取り合えず走りだしました。
「ど、どうしたんだよ、U?」
「いいから、にげろ!!」
U君は何も答えません。ですが、その理由はすぐにわかりました。
K君は後ろを振り向いて戦慄しました。
(着物を着た女の人…?)


そう、女性が走ってきています。
真っ黒な髪と、着物を振り乱し、必死の形相で。


ぽっかりと穴のように大きく開いた口が、今にも襲ってきそうな場所に見えました。
「うそだろ…?」
K君は走るスピードを上げ、いつの間にか前を走るU君に並びました。
そして、みんなに追いつき、二人は叫びました。
「にげろ!!!」
首を傾げるみんなでしたが、すぐに察したらしく走り出しました。
先生の手からライトが落ちました。
……

「ハァ、ハァ、ハァ…」
ログハウスのオレンジ色の電灯が、まるで天国のように彼らには見えました。
もうあの女は追ってきていません。
「…俺…Eさんをおいてきちまった…」
一息ついたみんなの前で、U君は頭を抱えました。
慰めるみんな。
それをうち消したのは、またしても担任の声でした。
「おや?」
見ると、先生はメンバーを数えているようです。
何がおかしいんだ、Eさんはもういないんだぞ。

怒気が一斉にわき上がりましたが、まだ先生は首を傾げています。
「どうしたんですか、先生?」
「いや、Eさんがそこにいるんだ」
!?
「おい、Eさん。いつからそこに?」
ところが帰ってきたのは、一番の戦慄を覚えさせる物でした。
「え?わたしずっとみんなといたよ?」
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いったいあの女は、なぜ自分たちを追ってきたのか。
K君は青ざめた顔で私にそういいました。

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