竜が壺の伝説

 昔、竜が壺に時折姿を見せる女神がいたそうです。ある時女神が水面に浮かび上がってきて珍しそうに地上の景色を眺めていると、岩影に咲いている山桜が目に入りました。女神は山桜を水底の龍宮に持ちかえりたいと思ったのですが、女神は水から出ることはできません。どうしたものかと考えていると、そこに男の神がやってきました。女神はあることを思いつき、男神に「私は、龍宮の女神です。乙姫様のお言いつけで、あなたを龍宮にお招きに参りました。」と声をかけました。男神がそれに心を動かされて手をさしのべると、女神は「乙姫様へのお土産に、あの山桜を一枝折ってきてください」と頼みました。男神は驚いて「あの花は山の神の花で、一枝たりとも折ってはいけない厳しい掟があるのだ」と言いましたが、女神が繰り返し頼むので、つい誘惑に負けて山桜の枝を折ってしまいました。そして、山桜を女神にわたして案内してもらおうとすると、枝を受け取った女神はするりと身をかわし、男神を残して水のなかに姿を消してしまいました。男神はその後、山の神の厳しい罰をうけたということです。

※この伝説は「伝説の赤目四十八滝」より抜粋したものです。